腕時計

母の腕時計。

持ち主の時が止まっても、
腕時計は、時を刻んでいました。

電池が残っているから動いているだけだけど、
それが不自然なことのように思えました。

しばらくは、動き続けることでしょう。
やがて、動きを止めるでしょう。

昨日の夜は、星がとてもきれいでした。
月がなくて、星は、空いっぱいに輝いていました。
星は涙の向こうで、静かに瞬いていました。

悲しい夜が明けて、今日の朝が来ました。

今朝の空と空気はこの上なく澄んでいます。
南アルプスの山々は雄々しく、
くっきりとした稜線を見せてくれています。

ウグイスの鳴き声が響いています。
凛とした、素敵な朝です。

　　　　　◇　　　　　◇　　　　　◇

時の流れはとどまることなく、
どんなときにも、
一定で、公平なのだなと、
腕時計を見ながら考えていました。

　　　　　◇　　　　　◇　　　　　◇

さぁ、頑張って、
母を送るために私ができること、
なすべきことをしましょう。