なぜP&Gがダイバーシティを推進できたのか?
日経WOMANが実施した調査「女性が働きやすい会社ベスト100」で、P&Gは2回連続第1位を獲得しています。P&Gも、以前は女性が働きやすい会社ではなかったそうです。ではどのようにして、女性が働きやすい会社になったのでしょうか?なぜダイバーシティを推進できたのでしょうか?
「ヒューマンキャピタル2009」の「女性活用・育成セミナー」の基調講演で、P&Gの桐山社長が、「多様性を組織の力に ~一人ひとりが違いを強みに貢献できる環境をつくるには~」と題して、P&Gのダイバーシティのあゆみ、取り組みなどを紹介してくださいました。
桐山社長の基調講演をお聞きした時の私のメモを、以下で紹介させていただきます。他の記事でも書きましたが、「ヒューマンキャピタル2009」のターゲットは、“企業経営者・管理職、人事・総務担当者”。一般従業員ではありません。ですので、桐山社長からも、企業のトップに向けたメッセージ、企業の人事担当者に向けたメッセージが発信されていました。この点に留意して、お読みくださいね。
聴講メモ
◆なぜダイバーシティが企業を成長させるのか?
- 多様性からイノベーションが生まれる。
- 多様性を受け入れる組織では、優秀な人材を獲得できる可能性が高い。
- 多様性を受け入れる組織では、管理職の組織運営能力が向上する。リーダーには様々な人材を活かす能力が要求されるから。
- ひとりひとりのユニークさを尊重するので、モチベーションがアップする。
◆日本企業と外資系企業とでは大きな違いがあるのではないか?
- P&Gは、様々な努力と改革の結果、現在に至っている。
- 日経WOMANの「女性が働きやすい会社」調査で過去2回1位を頂いているが、女性が特別なわけではない。男性にも女性にも公平な会社である。裏を返せば、男性にも女性にもシビアな会社である。
◆なぜダイバーシティを推進できたのか?
- P&Gの経営戦略として位置づけた。P&Gでは世界的に1990年代初頭にスタートした。
- 経営陣のコミットメントがあった。掛け声だけではなかった。
- 制度・プログラムを整えた。毎年実行し続けた。
- 評価に反映させた。
これだけやればOKか?答えはNO。
大きな壁が存在した。
◆どのような壁が存在したか?
- 固定観念という、見えない壁がある。
たとえば、男性の仕事だから女性にはできない。女性は子育ても結婚もしなければならないから、女性には無理。若すぎるし、経験がないから、この役目は無理。というように。 - 桐山社長ご自身について。27歳で東京支店の支店長になった。若いというだけで軽視された。それを一つ一つ乗り越えてきた。応援、サポートしてくれる人たちがいた。だから乗り越えてきた。
- 本人が望んでいるか否かが重要。機会を欲する人がいるかもしれない、ということを忘れないように。
→20年以上前、出産後、アメリカに、子連れで単身赴任した女性がいた。彼女の場合、そんなこと無理じゃないかという、自分が自分に向けた固定観念があった。周囲の固定観念もあった。「本当に無理か?あなたのキャリアについて考えるように」という上司の言葉があった。彼女は考え、子どもを連れて単身赴任することにした。アメリカでは、ビジネスはタフだった。でも日本よりも残業時間が少なくなり、子供との時間をたくさん持てるようになった。
→彼女は現在、R&D部門のトップの一人になっている。
◆効果的に実行・推進するためのポイントは?
- トップがコミットメントを宣言する。経営陣の退路を断つためにも。
- 制度やプログラムを確立する。
- リクルーティング(どのように採用するか?)からスタート。目標をしっかりと持ち、面接官のトレーニングを行うべき。男性中心のリクルーティングからの変革を。
- 啓発プログラム
男性にも女性にもトレーニングは必要。P&Gの場合、どうしたら人が人をサポートできるのかをトレーニングする。 - 人事支援制度
制度をサポートするカルチャーが必要 - 評価制度
社員全体に透明性を持っている評価制度が必要。P&Gでは書面にしてあり、誰でも閲覧可能である。 - 社内のメンタープログラム
レポーティングラインが異なる人をメンターに。
- カルチャーや風土を確立する。
- コミュニケーションは重要。社員と会社の双方向コミュニケーションが重要。社員は、困っていることを会社に言うこと。会社はまずはコミットメントを。
- 「平等」ではなく「公平」
平等は、老若男女、みんな同じであるとして扱う。公平には理由が必要。社員に対して、透明性をもって説明を。 - 透明性
◆不況下ではダイバーシティは進められないのか?
- 今だからこそ、過去できなかったことをする、という考え方もある。「危機」を「機会」ととらえる。「change」で「chance」に。
- 今も昔も変わらない企業理念がある。P&Gの170年の成長の裏にはダイバーシティがある。
- changeを起こす可能性について
changeを起こすのは、多様性があるからではないか。多様性があるから、イノベーションが起こるのでは? - 壁はあるが、まずはアクションを。
◆二つの現実
- 優秀な人は優秀。男性でも女性でも、やる気のある人は、やる気がある。多様な人材を採用できないことで、機会を損失しないように。
- 女性の仕事に対するコミットメントが変わってきている。会社や社会に貢献したいと考える女性は多くなっている。覚悟が必要なのは、会社の方かもしれない。
メモは以上です。
感想
桐山社長のご講演は、女性活用・育成セミナーの2番目の基調講演でした。1番目の基調講演は、経済評論家の勝間和代さんが講演者でした。勝間さんの講演が終わった後、会場を後にした方々がかなりいましたが、まだ立ち見の方がいらっしゃる状態。女性活用・育成セミナーということもあって、聴講者は女性の割合が高いようでしたが、男性もかなりいらっしゃったのではないかと思います。
とくに、「見えない壁(=固定観念)」の話は、かなり興味深く聞かせていただきました。自分の持っている「見えない壁」について、考え始めています。自分で壁を高くしすぎていないかというチェックも必要かな。
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