「没落家族のゴールデン・デイズ」を読みました。
金子香代さんの著書「没落家族のゴールデン・デイズ」を読みました。この本は後輩が紹介してくれたのですが、まず装丁にひかれました。桜の写真の表紙と深みのあるピンク色の背表紙。その色合いと調和が素敵だったからです。どんなストーリーがこの本には書かれているのだろうと、楽しみに本の扉を開けました。
ストーリーは大変興味深いものでした。戦前・戦中・戦後という時代の出来事を、時代を動かす人々に近い場所で生きた女性の視点で書かれており、すぐに引き込まれてしまいました。洗練されたつづり方、軽快な文章、そして、起承転結のしっかりとした構成。文章を書く者として、お手本にさせていただきたいと感じました。大変為になった本でした。
◆短歌にこめられた想い
「没落家族のゴールデン・デイズ」の中には、著者の金子さんがお詠みになった短歌が50首も含まれています。最初の一首を目にしたとき、限られた字数の中に込められた想いに、ハッとさせられました。もしかしたら、この本の中では、心情は文章ではなく短歌で意図的に表現されているのかも。
戦争の頃のことを記した書籍はたくさんありますが、私はほとんど読みません。戦争の歴史に目をそむけてはいけないとは思うのですが、読んだ後、自分の中に、かなり長い間しこりが残ってしまい、精神的に動けなくなってしまうからです。
でもこの本は違いました。そういった時代を描いていると知ったとき、ちょっと戸惑いましたが、それはほんの一時だけ。私は、普通の本と同じように読めている自分に気付いたのです。なぜか?それは多分、出来事中心で書かれていて、悲しさや辛さといった心情があまり書かれていないからではないかと、理由付けしてみました。
推測なのですが、著者がこの本に記したかったのはストーリーではなく、もしかしたら短歌の方なのかも。ストーリーは短歌の解説文の役割を担っているのかもしれないと、この本全体を通して感じました。
◆孫の世代がきく「戦争の話」の違い
空襲の中を逃げたこと。逃げる途中で子どもの一人とはぐれてしまったけれど、運良く見つけられたこと。空襲のために町から逃れたこと。食用油がなくて燃料の油を使って調理しなければならなかったこと。
私が祖父母から聞いた戦争の話はこういった内容なのですが、著者の金子さんのお孫さんたちは「没落家族のゴールデン・デイズ」に書かれているような話を、おそらく聞いているのではないでしょうか。当たり前のことなのですが、戦争体験は、体験した人がいた場所、時間、立場などで異なるし、感じ方も人によって全然違うはず。ですから、私たち・孫の世代が聞く体験談も異なるものになるのですよね。この本はそのことを気付かせてくれました。視野を広げてもらったように感じています。
◆自費出版の本
「没落家族のゴールデン・デイズ」は、自費出版された本なのだそうです。本当につづり方が上手だなぁというのか、率直な感想です。中には貴重な体験が書かれていますし、普通の本と同じようにもっと流通してもいいのではないかと感じています。
そういえば、いつの日にか、時間をたくさんとれるようになったら、残したい経験や想いを、エッセイか詩にしてみたいなと考えていました。もし未来のどこかで、本腰を入れて書くことになったら、私はこの本をお手本にさせていただくんじゃないかと思います。自分のことや身近な人のことを、こんなふうに上手に書くことは、私には到底できないかもしれないけれど。
「没落家族のゴールデン・デイズ」は、Google ブック検索でプレビューすることもできます。よろしければ、読んでみてくださいね。
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